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孫正義が人工知(AI)に全精力を傾 る理由、人類の「進 の歴史」をさかのぼれ

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ソフトバンクグループの代表取締役会長兼社長の孫正義氏の、近年のAI(人工知能)領域への傾倒は目に明らかだ。同グループの投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」はAI(人工知能)企業に特化し、80社を超える企業に巨額の投資を行っている。なぜ、孫社長はAIにこれほど期待するのか。これまでの技術と何が違うのか。SoftBank World 2019の基調講演で語った。

人類は推論で進化してきた

「未来を予見する水晶玉は実在しない。だがそれに変わるものが出現しようとしている」

孫社長の基調講演はこのようなフレーズから始まった。

人類は多くの進化を遂げてきた。たとえば空を飛んでいる鳥を見て、ダヴィンチは飛行機の原型を生み出し、天空を舞う星空を見てコペルニクスは地動説にたどり着いた。また磁石を見て羅針盤を、川に浮かぶ木を見てボートを、人類は生み出してきた。光を見てアインシュタインは相対性原理を考えた。「このように人間は推論しながら進化をしてきた。人間が持つ推論する力は、進化の最も大きな源泉になっている」と孫社長は力強く語る。

 そして推論をする上で欠かせないのが、データである。人間が生み出したものを挙げるとキリがない。電気や自動車、コンピューターなど、ありとあらゆるものが人間の推論の力で生み出されてきた。だが進化は行き渡ったわけではなく、「さらに加速していく」と孫社長は断じる。

1兆個のチップがモノの間でデータをやり取りする

 インターネット上に流れているデータの量はこの30年間で100万倍になった。ここから先の30年間でこれがどのくらいになるのか。「さらに100万倍になると推論する」と孫社長は言う。まだまだ爆発的に増加していくというのである。

 なぜ、そう言い切れるのか。自動運転の普及がその要因の1つだ。事故を未然に防ぎながら、目的の場所まで車を運ぶには、相当量のデータのやり取りが必要になる。またソフトバンクグループでスマートフォンやタブレット向けのプロセッサを開発しているArm社では、今後1兆個のIoTのチップが出荷されると予想しているという。

「この1兆個のチップがモノとモノとの間で膨大なデータをやり取りするようになる」(孫社長)

 通信速度も5Gで終わりではない。「6G、7Gと速くなっていく。データのトラフィック量の増加は、さらなるキャパシティー、スピード、レイテンシーの圧縮を求めて、それにより進化していく」と孫社長は言い切る。

 だが、このようにデータ量が膨大になると、それを活用して推論していくことは人間には不可能になる。そこで必要になるのが、AIの力だ。

「AIはこれまで人間が勘と経験と度胸に頼ってきた意思決定に変わり、科学的なデータに基づいた推論を可能にし、人類の進化はさらに加速していく」(孫社長)

とはいえ、AIの推論の精度はまだまだだ。時には人間の推論の方が優れている場面も多い。だが、5年後、10年後、30年後と時がたつほど精度は爆発的に上がっていくという。

「人と同じでAIも適材適所。AIは考えることは得意ではないが、プリディクション(予測、予見)は得意。AIにプリディクションを任せる時代がくる」(孫社長)

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